肥沃な土について話するときに欠かせないもの。腐植について
腐植の定義通常、土壌、堆肥、泥炭沼・水溜まりなど好気性・嫌気性の条件のもとで、褐色ないし暗色の非晶物質の複合体が、微生物によって動植物性残渣の分解中に生成されたものである。腐植は化学的には、最初の植物性残渣の諸成分のうち、それ以上は分解しがたい物質、現在分解を受けつつある物質、加水分解あるいは酸化または還元のいずれかによる分解の結果生ずる複合体、それに微生物によって合成された様々な結合物によって構成されている。腐植は自然の姿である。要するに、動植物質・微生物質のような合成体で、これら全ての物質がその生成に預かっているから、化学的にはいっそう複雑なものともいえる。腐植はある特殊の物理的・化学的・生物学的な特性を有するが、それによってほかの自然有機体と明確に区別される。腐植はそれ自体で、あるいは土壌中の何らかの無機成分との相互作用によって複合体コロイド組織を形成し、その様々な成分は表面張力によって結合している。このコロイド組織は反応・水分・電解質による作用の諸条件を変化させるのに適応している。このコロイド組織では土壌微生物の無数の活動が広汎に起こる。引用:Waskman, SA: Humus: 1938より
それゆえ、化学的、物理学的観点から見ると、腐植は単純な物質ではない。腐植はその元となる残滓の性質、分解の起こった条件、腐敗の程度などによって異なっている甚だ複雑な有機化合物の一群からなっている。したがって、腐植はどこにおいても全く同じではなく、環境の所産と言わざるをえない。その上、腐植は生きたもので、栄養分の大半を腐植に仰いでいる広範囲に分布している微生物と共棲している。自然の状態における腐植は動的であり、静的なものではない。それだから我々歯農業の観点からは、化学組成にしたがって分析したり、評価できる1袋の硫酸アンモニアのような単純な無生物を論ずるのではなく、農業者の目に見えない重要な労働力の一部門 土壌の働きを促進する生物 が、一時的に宿っている有機複合体を論じているのである。というわけで腐植は労働の要素を含み、この点でも農場における最重要な要素の1つである。
腐植の特性
- 腐植は暗褐色ないし黒色の特性をもつ。
- 腐植は、その一部が純粋の水中コロイド溶液になるかもしれないが、水にはほとんど溶解しない。腐植は希薄なアルカリ溶液、特に煮沸する場合に非常によく溶け、暗黒色の抽出液を出し、この抽出液の大部分はそのアルカリ溶液が向きさんで中和されると沈殿する。
- 腐植は動物性体・微生物体が含有するよりも若干多量の炭素を含んでいるし、腐食の炭素含有量は一般に55,56%位であり、しばしば58%に及ぶ。
- 腐植はかなりの窒素、通常は3~6%位を含有する。窒素の濃度歯しばしばこの割合如何になることもある。例えば高位泥炭の場合には0.5~0.8%に過ぎないこともある。特に心土ではもっと高くなることもあり、しばしば10~12パーセントに達する。
- 腐植は炭素成分と窒素成分を10対1に近い割合で含有する。この事実はその分解の段階、腐植が得られる土壌の性質・深度、腐植が生成される気象、その他環境的条件によって千差万別である。
- 腐植は静的な状態ではなく、むしろ動的な状態である。というのは絶えず動植物性残滓から生成され、微生物によって間断なくさらに分解されるからである。
- 腐植は種々の微生物群を生長させるエネルギー源と役立ち、分解中には炭酸ガスとアンモニアを絶えず逸散させる。
- 腐植はCEC 、他の土壌成分との化合力、吸水力、膨潤作用の能力が高いこと、及び、動植物の生命を支える気質のすこぶる貴重な組成分を作る物理学的・物理化学的な特性によって特徴付けられる。
作物に及ばす腐植の影響作物に及ばす腐食の効果は甚大である。自然と密接に接して生活している農業者、農民たちは、土壌が腐植に富んでいるか、どうかについては作物を見るだけで語ることができる。
- 植物の習性は独特の個性にまで発達
- 葉は健康色を帯び
- 花の色彩は濃くなり
- 植物の全機関の微細な形態学的特性もより鮮明かつ鋭く現われる。
- 根の発達は旺盛
- 活性根は伸張するのみならず、溌剌となる
- 種子はより一層発達するので作物の収量がよくなる
- 貧弱な土地の生産物では享受できない満足を家畜に与える。
- 食べ物が肥沃な土から生産されると動物は少量の食糧ですむ。
- 腐植に富んだ土地の作物は品味、質覚、保存性で優れている。
引用先 農業聖典 アルバート・ハワード著 1985年 日本経済評論社
0 件のコメント:
コメントを投稿