2011年12月17日土曜日

解決策にも多様性を

生物多様性という言葉は最近よく耳にするようになったけども、なかなかうまく多様性を築けていないのが現状だと思う。

先日も、兵庫県の中山間地の山間で聞いた、これだけ自然に囲まれているのに小鳥の鳴き声は聞こえないし、水は澄んできれいに見えるのに魚も見えない。ということを聞いたけどこれは生物の多様性が失われてしまっていっている例の1つだと思う。

昔から環境問題などを論じる時に良く挙げられるのがレイチェル・カーソンの「沈黙の春」ですが原題は「Silent Spring」春は鳥の鳴き声などが聞こえて心地よい季節のはずなのに何も鳴いていないということを意味しているのですが、同じようなことがこの本が出版されたのが1962年なので約50年近くたってもまだ現状多様性が復活してきていると言うよりはさらに多様性は失われて行っているのは間違えないだろう。



今は多様性よりも、単一で同じような安定したものをというのが傾向として強い。工業製品や食品、生きものや家畜までも単一の規格化が進んできている。

しかし自然の中で何か1つのものが占拠するという状態を作るのは良い状態とは言えない。

これは農業の生産にも言えることなのですが、今回は方向性を少し変えて農業の生産方法の多様性について書いておこうと思います。

今、慣行となっているのは虫が出たら虫を殺し、菌が病気の原因となるから殺菌し、草が生育の邪魔をするから枯らし、幾つかの成分のみでつくった肥料で育てるというのが一般的です。

この考え方のベースには虫=悪、草=悪、というような単純な思い込みがあるのだと思いますが、この傾向は近年より進んできており、新しい問題解決の方法も少しずつ増えてきています。
単純な解決策のために起こる問題も…


遺伝子組換え(GMO)なども同じですが、殺虫剤を撒く代わりに最初からその作物を無視が食べると死んでしまうような遺伝子を細胞に組み込んでというものや、除草剤で作物だけは生き残れるように除草剤に耐える事のできる遺伝子を作物に組み込んだり、そういったことが行われています。

除草剤や殺虫剤の大量使用による環境的な影響や栽培する人への影響などを考えるとこれも解決策の一つかもしれませんがかなり単純化されすぎていて、失敗も数多いと思います。

たった一つの大きな解決策
こういったアプローチは1つの大きなハンマーで問題を叩き潰すような感じなので、ビッグハンマーアプローチということにします。


これはRodale Instituteの主任研究員のポール・ヘッペリー氏が言っていた言葉ですが、現代の農業における問題の解決は化学物質や機械、科学で解決する事ができるということが前提になっており、それによる弊害や多様性の欠如などはほとんど考えられていない。

ビッグハンマーのアプローチとしては先程も挙げたように
遺伝子組換えや、大型機械、化学肥料、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、モノカルチャー栽培などそういったものがあるのでしょう。

いろんな形の小さな解決策の組み合わせ
しかしそれらのアプローチは欠点が多いのも確実で、その欠点を補う形の栽培が今後は大切になって行くということで彼はスモールハンマーアプローチの重要性を話していました。

例えば、単作ではなく混作して病害虫の発生を減少させることや輪作で同じ場所で同じ物の栽培をするのをやめること、化学肥料のように特定の成分だけを使うのではなく複雑な栄養分や、生きものの補給という意味でコンポストの使用、多様な植物を育てるカバークロップ、アグロフォレストリーで植生の多様性を築くなど

たった一つで全てがうまくいくようなものではないですが、小さな解決策を組み合わせて問題に対処する。問題の多様性を作るというこういうアプローチがこれからは必要になってくるし考える必要があり、その解決策としての小さなハンマーをいくつも持っていくというのがこれからの時代、気候変動や温暖化などの環境的な影響、土の劣化や植生の退化など、食の質の低下や人や生きものの病気や退化などさまざまな問題に対応していくこれから先の時代には必要になってきます。


百姓の言葉の意味として百の仕事が出来るというようなことを聞いたことがありましたが、まさにこれから百かそれ以上の、様々な形の小さなハンマーで問題を叩いていく必要があると思います。人によって様々なその小さなハンマーの多様性を作ることが出来たとき、沈黙の春も終わるんじゃないかとそんなふうな期待を持っています。

土を良くしていくアプローチもそうありたいものです。


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