2011年12月3日土曜日

植生の保護とアグロフォレストリー

農という面で通常は食べものを売るというのが先行してしまいますが、それだけではなく自然と共生する形というのも大切になってきます。

ただ広く、大きく、機械で、効率よくというスタイルでやるのはアメリカやオーストラリアの規模に勝てないので、結局価格では対抗できません。(これを支える補助金があるからというのもありますが)

日本では農地が狭いというのもあるのでしょうが、農地からデザインを考えることはただどういう風に畝を立てて、いつ植えてということを超えて大切な面もあります。

この部分においては日本で農地の生態系をより良くして作物がより快適に、また将来の農地の全体像を描きながらという意味ではかなり遅れてしまっているように思います。

未だに効率を考えて全ての木を切って…すべての草を刈ってというのが現状ですが、オーストラリアでの取り組みの中でおもしろいものを書いておきたいと思います。

まず最初に植生の回復という視点から。
オーストラリアも昔はあった植物を全て刈って、木を切り倒してというところから開拓が始まったそうですが、そのため、原生植物の減少や水という資源が少ない中での植生の維持というのには頭を痛めています。

イギリスの影響か必ずと言ってもいいほど各家庭に芝生の庭があり水が大量に必要になるということはかなり問題になっています。

この地方は亜熱帯にあたり、育つ植物も、植物の育ち方も日本とはかなり異なります。
下の写真は雑草を刈るときのものですが、見えにくいのですが一列に並べて原生の植物を植えています。これが垣根やウインドブレイクの役割として、また原生の植生ということもあり、強く、様々な生態系への影響を考えて、植えられています。



まだまだ見ての通り小さいのですぐに雑草に埋もれてしまい救出が必要になるのですが、この救出はまた大変です。通常であれば全て草を刈ってしまえば良いので、機械ですぐに終わりますが、このように植物を植えているとそれができないため手作業になってしまいます。
それをするだけの価値があるのとこれが育ったときの将来の農地デザインを先に机上でイメージしているからできることですが、かなり仕事としては増えてしまいます。

またこの辺りではマーケットに行けば熱帯雨林の苗木屋がほとんどどこにでもあります。
一般の人でも、簡単にその生態系や気候に合った、植物の苗が買えます。
農家だけでなく一般の人のお客さんも多いようです。



種類もかなり多く、一番驚いたのは、原生植物の種を集めること。日本で言うとどんぐり集めをするようなことが仕事として存在し、その仕事をしてお金をもらっている人がいるということです。

日本でどんぐり集めしてますと言ったら、笑われてどうやって食べていくのかと言われるのは間違いないような気がしますが。まあこの辺りでも普通の仕事ではないでしょう

それほど植生への意識は高いのはまちがいないです。

高速道路沿いに潜在自然植生の植物(亜熱帯性)のものを植えるというのも30年程前から1市民の活動で行われる様になり、現在ではそれが当然のように浸透しています。
気候にあった植生の管理をすることによるコスト削減のメリットが州政府などにとっても良かったのでしょう。

右の写真は植えたばかりの苗ですが、こちらも農場の外郭の部分今まではほったらかしになってクスノキ科の木とユーカリの大量繁殖になっていた部分に低木から高木までがきれいになるようにという形で植えられています。
周辺には木を粉砕したチップを大量にしいて雑草を抑えています。


アグロフォレストリー(農場森づくり)もかなり取り組んでいる人が多くアグロフォレストリーのコースがあって通って基本を勉強してる人もかなり大勢いました。

ビジネスとしてピーカンナッツを栽培している生産者の方も今年からアグロフォレストリーを取り入れて植生を戻していくということに投資を始めていました

直接利益に結びつくわけではないですが、土壌侵食や、益虫との共生などさまざまな面からのメリットを考えるとこの投資も必要だと始めていました。

日本ではまだまだ杉植林の問題の解決もされていないし、農地内での植生の構築ということに取り組んでいるところは少ないと思いますが昔の日本における里山の役割や、農地内での柿や栗の木はその一環だったのではと思うので昔は現代的に考えると最先端だったのかもしれません。

アグロフォレストリーに関しては専門化でも何でもないのであまりわかりませんが、探索で大規模でやることでの起こる大きなマイナス面を考えた方向転換の一つなのではないかと思っています。

オーストラリアで多くの方が取り組んでいるこの植生への取り組みで一番大きな影響を受けたのはアボカド農家のケイトからでした。


彼女の農場は10haとオーストラリアでは極小規模農家。 その半分以上を削って半分以上を亜熱帯の植生を取り戻すための活動を週の半分以上を割いてやっていました。

今植えたこの木が大きく育つ頃に私は生きていないだろうけど、その時にこの農場で農業をしている人(願わくは私の娘たちや子供たち)が私が植えたこの木が森になったのを見てこんな豊かな自然を残してくれてありがとうと言ってくれるだろうからそのためにやっている。
と100年位先の植生を想像しながら森の再生に取り組んでいました。


彼女は大きな団体でもなく、個人。一人の取り組みでこんな将来を見据えてという姿勢には本当に感動させられました。

自分が今こうやって次の世代や100年後につなげる土の再生ということをやっているのも彼女の影響が大きいです。

確かに現状日本では大きな動きとしての自然保護はあまりアリませんが、個人でできることをやるということは、そういう団体に入って何もしないより遥かに大切な事だと思います。

農場の周りを囲む自然植生(野菜)


こういった植生を農に活かすという取り組みは今後研究も必要ですし、机上だけでなく、実践でも行なっていかなければならないことの一つでしょうね。






0 件のコメント:

コメントを投稿