2012年9月26日水曜日

「動物性を使わない」について

土づくりでよく聞かれること
土づくりについて、よく聞かれること、またそれを気にしている人が注目するポイントで多いと感じるのが、「動物性を使わない」ということ。
「動物性を使わない」ということを言われた時に、まず頭をよぎるのは、「そうか、動物性のものを使いたくないんだな。」ということです。
そうすると、自然と話は、その話題を避けつつになってしまいがちです。確かにそこで、動物性についての話をすることはできても、最初から頭で受け入れられなくなってしまっているところに入っていくのは、大変で時間がかかることだから、だいたい触れないようにしています。

しかし、土について考えた時に、「動物性を使わない」ということが、何より大切なことなのでしょうか? また「動物性を使わない」ということで、良い土を作っていくことができるのでしょうか。


動物性が指すものは
動物性の良し悪しを考える以前に、「動物性」とは何を指しているのか?を考える必要があります。
多くの場合、何を指しているかというと、家畜由来(家畜ふん、骨粉、血粉など)でしょう。中でも家畜ふんが、一番中心に来るのではないかと思います。確かに有機農業でも使えるものであり、安く、どこでもあり、手軽に使えるものとして、日本中どこでも売られています。
こんな安く手軽に買えます。

これに対するアンチテーゼのようなところが、かなり大きいのではないでしょうか。確かに、鶏や牛の餌に含まれるモノ(抗生物質や、遺伝子組み換え食品、農薬や除草剤の残留など)を考えると、ホームセンターで売られている、この安い鶏ふんや牛ふんを、そのまま使うのはどうかなと思います。

動物性は、どこからが動物性なのか?
では動物性とはどこからが動物性で、どこで区切られているのかを考えてみたいと思います。ホームセンターで売られている、安い家畜ふんを使わないとしましょう。これだけで動物性を避けれるかというと、そういうわけにもいきません。

田畑の中には、様々な虫がいます。
大きな生きものカエルや、コオロギ、ヘビなどもいます。もちろん、土にはミミズ、ムカデ、ダンゴムシなどの生きもの。
ヘビ

線虫やアメーバなどの原生動物、カビやバクテリアなどの微生物。

カラスやキジのような鳥もやってきます。


このように、様々な生きものが「暮らしている」生物多様性がある状態が理想的だと言われています。

本当に「動物性を使わない」ということになると、鳥が入ってこれないように全面柵をしなければならないですし、空からフンをされないようにも対策を立てて置かなければならないです。土にいるすべての生きものや、カエルやヘビなどは全て殺してしまわなければならなくなるかもしれません。

まさかこんなことは誰も望んではいません。

例えば、リビングソイル研究所では、一部ミミズコンポストをしています。出来上がったコンポストをミミズにもう一度処理してもらう。このミミズコンポストの後のコンポストは投入前と比べて質の高い良いコンポストになっています。
ミミズコンポスト
これも、動物性かどうかというと、動物性でしょう。ミミズの体を通って排泄されたもの。そう聞くと気持ちが悪いかもしれませんが、出来上がったミミズコンポストは手触りも良いし、機能性も高いものになっています。
もちろんこれは使います。

過剰は異常のしるし
おそらく大抵の場合、動物性が問題があるのではなく、それらが過剰であることが問題なのではないでしょうか。

過剰な牛、アメリカ
・水が過剰だと、洪水や土砂崩れなど様々な災害を
・酸素が過剰だと生きものは生きれない
・栄養が過剰だと様々な病気に
・土への栄養が過剰だと、土の劣化から水質汚染まで様々な問題

こうやって見ると、過剰な環境は問題を引き起こしてしまいます。

山や森の中でも、動物性である生きもののフンなどはありますが、過剰にはありません。それは草や葉などど同じく、また土へと戻っていきます。しかしもしこれが過剰だったらどうでしょう。土へ戻っていくサイクルがおかしくなったり、水質汚染につながったり、山や森の植物にも影響が出てくるでしょう。
狭い面積に牛が1000頭。鶏が10万羽なんて考えると、森や山にそんな過剰に生きものが集まっている環境はないでしょう。

動物性を排除するのではなく、土づくりしましょう
土にとって大切なことは、動物性を排除することではなく、その環境下に暮らす生きものを支え、植物を育てることができる能力を維持し続けることです。
動物性を避けるのは人それぞれの想いがあるので、良いも悪いもありませんが、「動物、肥料、チッ素」など今回触れていないものもありますが、単語がひとり歩きし、土ではなく、それらの悪者をさけるというのが、動物性を使わないという言葉につながるのであれば、少し違うのではないかと思う。
どうも肥料や動物性ばかりイメージが先行して、土が良くなったか、悪くなったかということには繋がっていない気がします。

良い土を作っていくためには、どうしても生きものの力が必要です。彼らが有機物(草や葉、根の残さなど)を分解してくれなければ、ゴミが溜まる一方で、土はできて行きません。できる限り生きもの(動物)の力を借りて、良い土を作っていけるようにしていくことはこれからの課題ではないでしょうか。

私たちが考えていくべきなのは、動物性云々ではなく、
良い土が、良い食べものを育て、いい食べ物が私たちを形作っている
ということではないでしょうか

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