2012年8月12日日曜日

搾取の先に残るもの


搾取農業
 ハワイの大規模農場の跡地は、「搾取」という単語がよく似合う。オアフ島の北部はもともと100年近くの間、サトウキビの栽培が盛んで、大規模なサトウキビ農場がありました。

10年ほど前から、サトウキビの栽培が廃れて、現在はほとんど残っていませんが、その100年程度の農業の結果として、残った農地はあまりにも無残なものでした。
農地の土や、環境に関しては何も考えず、サトウキビを収穫しては世界中へ出荷していたその様は、ハワイの土が長い間にわたって、蓄え続けたものを吸い取って「サトウキビ」という商品に変える。まさに、搾取という言葉がふさわしい現状が残されていました。

アメリカやオーストラリア、ブラジルなど農業輸出国が、普通に行なっている大規模栽培による、土の劣化や、水質汚染、環境への悪影響、または人や生き物への悪影響は話に聞いたり、本で読んだりはして、知っているつもりでしたが、実際に目で見て、現地の人の話を聞き、土を触ったりするという「体験」をすることで、その意味をより深く実感することができました。


搾取する形の典型
 オアフ島でも、サトウキビの栽培がなくなったからといって、大規模な搾取型の農業がなくなった訳ではありません。今最も多く栽培されているものは「遺伝子組み換えトウモロコシの種」です。サトウキビから、遺伝子組み換えトウモロコシに姿を変えて、未だにその形は続いています。

搾取する形の農業は、どこの国でも、大抵同じ形をとっています。
サトウキビから、遺伝子組み換えトウモロコシに

1、大規模な単一作物を育てる
2、機械化が進んでおり、人間の手はほとんど不要
3、食べものを、「人間のためにだけ」育てる


作物が変わっただけで、未だにハワイではこのような搾取型の農業が多く残されています。ではどのように問題を引き起こしているのか、どのように土が劣化しているのか。これを説明したいと思います。


・「自然の土」と「不自然な土」

 自然農法などが有名な日本でも、よく「自然」という言葉が使われますが、私たちが見ることができるのは、今ある土だけです。本当にこの土が、自然な土なのかは、同じ環境で人が触っていないところの土と比較してみる必要があります。
例えば、サトウキビの跡地では10年、20年人間がさわらず、一切の化学物質を使用していなくても、土は自然な状態にまでは、回復することができません。


オアフ島の北部の土は、粘土質の赤っぽい色の土。

「元々は森に覆われていた、このあたりの土は本当に、この土だったんだろうか?」 どこを見ても、同じような土が広がっていましたが、その答えは原生林の中にありました。

原生林

原生林の中では、深くまで黒い土が続いていて、とても肥沃な土が続いていました。



また、大規模なサトウキビ栽培が、行われていなかったところも、土の状態はずいぶん違っていました。
写真。大規模搾取型が行われなかったところ



  • 左の黒い土が、人の手が加わっていない原生林の土
  • 真ん中は、大規模なサトウキビ栽培が行われなかった一般の家庭の庭の土
  • 右の写真は大規模なサトウキビ栽培の跡地


この様に、見た目も違えば、土の機能も全く違ってきます。
一例を挙げると、乾燥したオアフの気候で、作物を育てようとすると、必ず水を外部から与える必要があります。
右の赤土は、写真の上にもあるように、粒子が細かく、下に引いている紙の隙間に入り込んで取れなくなります。そのような土に、大量に水が入るとどうなるかというと、「ベタッ」として、陶芸用の粘土のように、ベタベタに固まってしまいます。

それとは対照的に、左の土はコロコロした土の塊があるため、水が入ってもその隙間に水が通るため、ベタッとすることなく、不必要な水はスムーズに流れてくれます。

これ以外にも色の違いだけではなく、ものすごい土の機能の違いがあります。
右の土は、今までいろんな土を見た中でもワースト3に入る悪い状態でした。


・200年前のハワイを想像する

 この違いから、200年前のオアフ島を想像すると、おそらく今のように裸の土や、単一の作物が広がっていたのではなく、原生林のような森が広がっていて、その下には写真の左のような黒い土が豊かにあったのではないかと思います。

何百年、何千年もの間、自然が蓄えてきた肥沃な土。それを外部から入ってきた人が森を切り払い、何かの作物(または家畜)を植える。
その後の10年~20年は、あまり手をかけなくても、どんな作物もおそらく良い出来や、高い収穫高だったと思います。

サトウキビも同じように、高い品質と、収穫高があげられることがわかって、小さな島の中で大規模になったのではないかと思います。

ハワイの歴史を知っているわけではないので、はっきりしたことは言えませんが、この様に土を見て考えると、たった、100年、200年という短い間に、この様な状態の土がほとんどを占めるような環境になってしまったのは驚きです。

昔に、文明が栄えたところに砂漠が広がっているのは、人間が搾取した結果。(参考:土の文明史)というような意見があるように、私たちに欠かすことができない食べもの。その食べものが育つために必要な土。それが失われて、劣化してしまったらどうなっていくのか。

短期間で劣化していった、オアフ島の農地を見ていて、このことが常に頭をよぎっていました。

この環境の中でも、そこにはオーガニックファーマーがいて、悪い環境や土を、どうにか良くしようとしています。
次は、彼らの取り組みや問題、また彼らが行なってきたことの結果などについて書いておきたいと思います。

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